2010年11月3日水曜日

EMDRセラピー

不登校生を援助する会、DV被害者を援助する会等、様々な援助活動をされている方々にお会いすることが多くあります。EMDRがまだまだ知られておらず もっと広まって欲しいと思います。

日本EMDR学会の説明

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理)は、最近マスコミなどでも取り上げられることの多くなったPTSD (Post Traumatic Stress Disorder:外傷後ストレス障害)に対して最も効果的 と言われて、大変注目されている治療方法です。1989年にアメリカでFrancine Shapiroという臨床心理学者が発表して以来、アメリカを中心に注目を集め、今日ま でに全世界で40000人以上の心の専門家(精神科医、臨床心理士など)がこの方法のトレーニングを受けています。日本でもおよそ500名の専門家がトレーニングを終え ました(2003年8月時点)。

 PTSDとは、最近では阪神大震災の後に話題になったのでご存じの方も多いと思 います。強い情緒的衝撃を伴うようなできごと(天災、交通事故、暴行、虐待など) の後に、そのできごとについて考えたくもないのにそのことを考えていたり、悪夢にうなされて睡眠が妨げられたり、集中力が落ちたり、恐怖感・不安感などに悩まされ たりするようになって、生活の色々な面に支障がでるようになる状態のことです。外傷的なできごとがあると、そこでの傷となる経験は、その経験が生じたときの映像、 音や臭い、思ったこと、身体感覚などの形で脳の神経ネットワークに貯蔵されると考 えられています。通常は我々の脳がその記憶に働きかけ、知人や家人と話したり、考 えたり、夢を見たり、日記に書いたりといった作業の中で、時間の経過とともにでき ごとに肯定的な意味づけをしたり、できごとをより小さく、自分の世界をより重要視したりすることで乗り越えることができるようになります。しかし、このような作業 をしても、いつまでも悲しみや恐怖が弱くならない、前向きに考えられない、過去のできごとがその人の中では一向に過去にならないときには治療が必要となるのです。 PTSD以外の精神疾患の中にも、こうした過去の記憶がいつまでも引っかかってい ることが症状につながっていることは多く見受けられます。

 EMDRは、外傷的なできごとを考えてもらいながら、治療者が患者さんの眼の前で指を一定の速度で動かし、それを眼で追いかけてもらうといった比較的単純な手続 きを中心とした治療技法です。眼球運動は脳を直接的に刺激し、脳が本来もっている情報処理のプロセスを活性化できるのです。ですから、5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを非常に短時間に進めることができます。そして、その過程は患者さんの脳の本来の力を引き出すので、マインドコントロールのように洗脳される、治療者に操られるというような心配は全くありません。また、止めたいとき にはいつの時点でも止めることができます。また、これまでの治療方法では、起こっ たできごとのすべてをこと細かく語ることが必要とされることが多かったのに比べ て、大変ストレスの少ない技法と認められています。


--------------------------------------------------------------------------------

2010年5月20日木曜日

父親は大学教授!

モントリオールでの事例です。

来談目的:離婚を楽に乗り越えたい
職業: 会社員

「自分はバカだ!愚かだ!」
と ことある度に口にされます。

彼に 自分を愚か、と思い始めた時期を聞いてみました。

「高校の時だった。地理、科学、英語、フランス語、歴史、どの教科も好成績だった。けれど 数学が75点だった。父親に見せると“今度頑張れば良いよ!」と言われた。自分は 愚か者だと思った。友達は “75点で充分だろう、何がいけないんだ?”と言っていた。」

という記憶が出てきました。

お父さんは有名な大学の教授。
「父を尊敬している。」
と言いつつ 父親と自分の学歴、職業を比較しておられます。

このイメージについては ご自身の中で 充分熟成されていたようです。
10セットのEM(眼球運動)で 
「自分は 父とは違う。自分はありのままで良い。」
という所に落ち着きました。

EMDRは 一つのイメージについてセラピーを行います。
似たような内容であれば 一番古いトラウマにセラピーを行うと 新しいものが消えやすくなったり 消えたりします。

2010年5月12日水曜日

長年Aさんを苦しめて来た両親の争い

2009年10月にEMDRセラピーをしたAさん。ギリシャ系カナダ人です。

ターゲットは
「4~5才の頃、両親のけんかを見た。父親が髭そりナイフを持って 母親を追いかけていた。」

この記憶を抱えてAさんは40年以上生きて来られました。
現在のパートナーとは 10年間一緒に暮しておられます。しかし彼女の気持ちの中では 常に不安定感があるとのこと。

精神分析セラピーを3年間、行動療法を2年間続け、EMDRセラピーを試みた時まで 行動療法の面談を受けていたそうです。

Aさんの場合、トラウマが大きかった為 脱感作にとても時間がかかりました。
1回目、2回目共に 100セット以上の眼球運動を行いました。
疲れて来た時に タッピングに変えたのですが Aさんは 眼球運動の方が集中出来る、とのことで休みながら行いました。

1回目が済んだ時は 10のSUDsは 5まで下がりました。
2回目は3。
軽いトラウマの方に比べて とても時間がかかりました。

合計で5回の面談を行いました。

「5年間セラピーに通っていたのに イメージは持ち続けていた。1週間に1回の 5週間で消えるなんて 魔法のよう!ありがとう! 何かあったら また連絡するわ。」

7ヶ月経って メールでやり取りしました。
「前より 行動的になったと思う。イメージは すっかり消えた。よく思い出せない。」
とのことです。


 

EMDRセラピー 半年後

2009年12月初旬にEMDRセラピーを受けたクライエントQさんと会う機会がありました。

ターゲットは
「4~5才の頃 自分が気に入っていた格子柄のスカートをはこうとしていると 母親に“似合わないから 止めなさい!”と言われたこと。」
でした。

当時クライエントは 実習を伴う授業が多い各種学校の学生でした。
自分の判断に自信が持てず、些細なことに周囲の様子を見てから事を運ぶため テンポが遅れる。実習の際 一斉に作業を始めるのに支障をきたす、ということでした。

半年後に会ったQさんは
「EMDRのおかげで くよくよしなくなりました。あんなことがあったなぁ、と思う位です。学校でも 周りを気にしないで実習出来、おかげで無事に卒業しました。EMDRがすごく効果があって 生きるのが楽になるって 悩んでいる人達に教えてあげたいと思います。」
と おっしゃって下さいました。

EMDRセラピーを知らないという方から 
「記憶が戻るということは無いのですか?」
と質問を受けたことがあります。

EMDRが北米で急速に広まっているのを見れば 戻ることは無いとはつながりませんが 効果的な治療だと認められている、ということだと思います。

日本でも「日本EMDR学会」がトレーニングを行っています。

2010年1月14日木曜日

母が姑に言われた言葉

半年前に帰国した時も 今回も 姑に言われた同じ言葉を繰り返す母がいました。
前回は EMDRの受講前でしたので 母が長年信仰してきた天理教の教えを唱えてもらっていました。
「人が何事言おうとも 神が見ている 気を静め。」
母が同じ言葉を言い始めると
「さん、はい。」
と掛け声をかけると 母は素直にそれを歌い始めました。

今回も1日目にして 同じ言葉が出てきました。
「忘れた方が 気が楽でしょう?EMDR試してみる?」
と聞くと
「そうね。もう忘れなきゃね。」
と 素直に治療を受け入れてくれました。

一定の手順を踏んで治療をしました。
悟ったような言葉が治療の中で出てきました。

帰省後1日目のことでしたが その後10日間 同じ言葉は繰り返されませんでした。
もっとも転んで腰を痛めたのが5日で、痛みで何も考えることが無かったかもしれません。

今度帰省したときに 同じ言葉が出てこなかったら 効果があった、ということになります。
楽しみです。